撥水加工における長期ランニング適性を改善した
「NKガード Sシリーズ」
撥水撥油加工において、加工処方の連続加工適性に問題がある場合、加工生地に修正の困難な性能バラツキやエンディング、汚れなどが発生し大きな問題となります。そのため、加工場では処理液が不安定になり機械に樹脂状の汚れが付着する前に、機械洗浄と処理液交換を行っています。この機械洗浄、処理液交換の頻度を出来るだけ減らすために、より連続加工適性の高い薬剤、処方が求められています。
日華化学は、長時間の加工でも機械汚れのないC6タイプのフッ素系撥水撥油剤「NKガード Sシリーズ」の開発に成功。生産効率の向上に寄与するこの製品の課題解決事例をご紹介します。
課題解決までの道のり
STEP 01 背景
マングル汚れの発生による生産効率の低下
生地の撥水加工は、撥水剤を所定の濃度に調整した含浸槽と、マングルなど処理液の含浸率をコントロールする絞り装置で構成されるパッド処理機で加工されることが一般的です。パッド処理では、処理浴のスカム発生やマングルガムアップによる生地汚れは共通して起こりやすい現象です。特に、撥水加工では汚れの修正が困難なため、この現象をできるだけ引き起こさない加工剤や加工処方が求められています。
また、これらの汚れは、加工剤を含浸した生地を回転するマングルで絞った際の機械的な衝撃や、生地から持ち込まれる染料や活性剤による乳化破壊が原因となっています。マングルに付着したフッ素樹脂が空気に触れることで乾き、汚れとなります。その汚れが生地に付着することで、加工トラブルを引き起こしていました。
加工場はマングル汚れが発生する度に加工を止めて、加工機を洗浄し、処理液を作り直す必要があり、生産性の低下につながっていました。
STEP 02 課題発見
ラボと現場の加工条件
実際、加工場は以下の課題を抱えていました。
- 従来のC6タイプのフッ素系撥水撥油剤では、連続加工3,000m以下でマングルにガムアップが発生する
- 汚れが発生する度に加工を止めて機械の洗浄、処理液の作り直しをおこなうため、加工に時間がかかっている
ラボでの製品開発は、いかにして現場での加工条件をラボで再現し評価するかが課題でした。
ラボと加工場での一番の違いは、連続加工であること。生地から処理浴に持ち込まれる染料や活性剤の量も異なり、気温などの作業環境も異なります。ラボでいかに現場と相関の取れる条件を再現するかが、開発を行う上で最も重要な鍵となります。
STEP 03 製品開発
製品開発と加工処方の選定
開発スタッフは、実際に製品を使う加工場に出向き、現場と相関性のあるラボ評価方法を確立し、製品組成の検討、最適な加工条件の選定に取り組みました。さらに、加工場の現場での評価を繰り返し、加工安定性に優れたC6タイプのフッ素系撥水撥油剤「NKガード Sシリーズ」の開発に成功。
精練、染色、仕上げまで生地の加工工程全てを熟知しているNICCAだからこそ、優れた撥水性と加工安定性を
両立できる撥水剤と加工処方を開発することができました。
STEP 04 課題解決
生地の連続加工10,000m以上、マングルガムアップの発生なし!
撥水性を維持しながら、マングルガムアップを起こしにくい組成を選定することで、撥水剤自体の加工安定性を向上。
さらに、加工斑がなく安定した撥水性と長期ランニング適性に優れた撥水剤、加工処方を提案。
また、加工前の生地の状態も連続加工安定性に大きく影響することから、前工程の条件指導なども併せて行うことで、
以前は連続加工3,000m以下で発生していたマングルガムアップが、連続加工10,000m以上でも発生しなくなり、
生産効率が大幅に上昇しました。
「NKガード Sシリーズ」は、洗濯耐久撥水撥油性、加工安定性、柔軟な風合いが特徴のC6タイプの撥水撥油剤です。
環境に配慮したPFOAフリー*の撥水撥油剤(*検出限界5ppb以下)として、幅広い用途にお使い頂けます。
担当者の声
界面科学研究所
商品開発研究部
柘植 好揮
撥水加工における加工場の生産効率を改善!
加工場を悩ませていたマングルなどの機械汚れは、ラボでの製品開発だけでは解決できない問題でした。
今回、加工場のご協力により現場への立ち入りを許可して頂いたことで、トラブルの実態を確認するとともに、実機での現場試験を繰り返すことができました。その結果、「NKガード Sシリーズ」の製品化が実現し、加工場の生産効率を向上できたことが、次の開発への意欲につながっています。
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