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R&D 100 Award 受賞:フッ素フリー系撥水剤「ネオシード NR-8800」

2020年9月、シリコーン特有のソフトな風合いと優れた撥水性を両立させた当社フッ素フリー系撥水剤「ネオシード NR-8800」が、米国R&D World Magazine主催の「2020 R&D 100 Award」を受賞しました。「ネオシード NR-8800」は、従来のシリコーン系撥水剤の欠点であった縫目滑脱の問題を高度な界面活性技術によりクリアした革新的な製品で、その技術が高く評価されました。
「R&D 100 Award」は、産業界・学界・政府支援による研究を対象に、過去1年間に実用化された製品・技術の中から最も優れた100件を選出し表彰するもので、1963年から「技術の優位性」を評価基準とし、表彰を行ってきた世界的に権威ある技術賞のひとつです。
今回は、R&D 100 Award winners に輝いた「ネオシード NR-8800」が完成するまでの道のりをご紹介します。

スポーツ・アウトドアウエアに求められる撥水性と動きやすさの両立

世界的なアパレル・スポーツ・アウトドアメーカーは、グローバルサプライチェーン全体で全ての有害化学物質の使用・排出を2020年末までにゼロにする「デトックス・キャンペーン」に参画し、SDGs達成に向けた取り組みの一環として有害懸念のある化学物質の使⽤・排出をゼロにするための活動をおこなっています。その流れを受け、フッ素フリー系撥水剤を求める動きは世界中で加速していますが、代替技術として主流となっているアクリル系、ウレタン系などのフッ素フリー系撥水剤は、処理した生地の風合いが硬くなる、スクラッチマークが発生するなどの問題を抱えていました。
特に、スポーツ・アウトドアウエアにおいては、着用時の快適性を損なわず、スクラッチマークによる意匠性の劣化を起こさない柔らかな風合いが求められており、耐久撥水性、柔軟な風合い、縫目滑脱防止、スクラッチマーク防止などの各種性能をクリアする必要がありました。

様々な成分を開発・評価していく中で、撥水性を劇的に向上させながら風合いは損なわず、縫目滑脱を引き起こさない画期的なシリコーン成分を発見。さらなる技術の高みを目指す中で、世界的素材科学メーカーであるダウ社(米国)との共同開発がスタート。長年に渡る共同開発を経て、ようやく撥水性と柔軟性を両立した「ネオシード NR-8800」が完成したのです。

革新的な技術

従来、困難と考えられてきたハイレベルな耐久撥水性と風合いの両立。それは、様々な生地物性を満たすことの難しさからでした。
通常、風合いが柔らかいものは生地を構成する糸同士が滑りやすく、生地を引っ張ったり力を加えると生地組織が崩れて穴が空きやすいという欠点がありました。ダウンジャケットの場合、中に入っているダウンの羽根が抜けやすくなるほか、撥水性が低下するなどの問題が発生しました。この問題をクリアするには、硬い樹脂で被膜を形成するしかなく、風合いと穴空きの課題をともにクリアすることは困難でした。また、昨今は軽量化のため細い糸を使用する傾向があり、細い糸になればなるほど生地組織が崩れやすく穴空きしやすくなったため、さらに対応が困難な課題となっていました。

そのような高い壁に対しても、私たちは諦めることなく開発に挑み、風合いを阻害することなく生地組織が崩れないように被膜を形成する技術を確立したのです。

ネオシード NR-8800の提供価値

 

ネオシード NR-8800は、優れた撥水性と柔軟な風合いを両立させた撥水剤として、以下の価値を提供します。

  • 洗濯耐久撥水性に優れ、アウトドアウェアなどの高い撥水性が要求される分野に最適です。
  • 生地の風合いを損なわないため、薄地軽量素材など幅広い用途にお使い頂けます。
  • 加工布の引き裂き強度、縫目滑脱防止性が良好で、着用による生地劣化を防ぎます。

ネオシード NR-8800は、グローバルアパレルやスポーツブランドなどに次々と価値を認められ、着心地の良いダウンジャケットやアウターウエアへの採用が広がっております。ご興味のある方は、お気軽にお問い合わせ下さい。

開発担当者のコメント

登山が大好きな私は、雨具のような防水機能のあるアウターにおいても動きやすいタイプを好んで使用していました。しかし、撥水加工、特にPFCフリー撥水剤を加工したウエアに関しては、消費者の一人としてその硬い風合いを何とか改善できないものかと考えていました。
今回開発した「ネオシード NR-8800」は、まさに自分が求めていた撥水剤であり、NR-8800を加工した市販品を購入し登山に出かけたときは、思い描いてきたことを実現でき、感慨深い気持ちでいっぱいになりました。
今後もアウトドア好きな開発者として、仕事を通じ、グローバルなアウトドア・アパレルメーカーに貢献できるよう開発を続けていきたいと思います。

開発メンバー

日華化学株式会社
界面科学研究所
商品開発研究部

後藤 昌央

日華化学株式会社
界面科学研究所
商品開発研究部

前田 高輔

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